一目惚れが科学者に及ぼす作用と反応についての考察
ヴィシュニュウ号の訪問から約四ヶ月後。
地球の軌道上には、再びテューリアンの宇宙船がその雄大な姿を浮かべていた。
地球人とテューリアンは、やがては定期便を設けるべく方針を打ち出してはいるが、まだ現在は細部協議中であり、便数も少なく、乗客は「誰でも申請すれば空き具合によっては乗せてもらえる」という驚くべきテューリアン船の真の情報を知っている一部の人間のみであった。
その数少ない乗客の中で、国際連合宇宙軍(UNSA)の先進科学局(ASD)の副長官の身分を持つヴィクター・ハントは常連客と言ってもよかった。
彼はテューリアンと地球の星交を開いたそもそもの立役者の一人であり、ジェヴレンやジャイスターにも知己を多く持っている。
ハントの旅行は今回は純粋にテューリアン科学の視察であり、ガルースたちと実際に再会できることを楽しみにしていた。

船の出発を待つ間に、ハントがカフェテリアで紅茶をすすっていると、常のように未知と既知とを含めて数名の人間が彼を見かけて声をかけ、挨拶と社交の儀式を交わした。
何番目かに近づいてきた男は灰色の髪と鳶色の目をした穏やかそうな老紳士で、若い女性を一人伴ってハントの前に現れた。
その女性を一目見た途端、ハントは不思議な感覚が湧き上がってくるのを感じた。
「ハント博士でいらっしゃいますね?」とその老紳士はハントに尋ねた。
  「ええ、そうですが」
「はじめまして、私はユネスコ(UNESCO(United Nations Educational, Social and Cultural Organization):国際連合教育社会文化機関)の異星文化局のジュリオ・クレメンティ教授と申します」
ハントは差し出された手を握った。
異星文化局とは最近できた組織であった。ハントと教授はかなり広い意味では同じ国連職員同士と言えたが、もちろん今まで面識などあるはずは無かった。
「こちらは私の補佐をしてくれている学芸員のヒロミ・オルフィーノ君です」
教授の後ろに控えていた女性が彼に導かれて一歩前に進み出た。
なんとも神秘的な雰囲気の女性だった。
ヨーロッパ人ともアジア人ともつかぬ顔立ち。名前からしても両者の混血に違いない。
オルフィーノという姓はイタリアのものである。ヒロミという名前は中国ではないだろう。日本か韓国か。
とびきり絶世の美女というわけでは無かったが、まず十分に十人並み以上といえる容貌であり、スタイルがよくて、艶やかに流れる長い黒髪が魅力的だった。
「お会いできて光栄です、ハント博士。ヒロミ・オルフィーノです。―――宜しければロミとお呼び下さい」
彼女の声を聞き、握手を交わした瞬間、再び先程の不思議な感覚がさらに強く衝撃となってハントの脳内を駆け巡った。
まるで初めて眼鏡をかけた時の人間のような気分だった。一度に世界がクリアで明るく広がって見える。
あるいは完成図も知らず、足りぬことさえ気付かなかったジグソー・パズルの最後の一片を見つけたような。
邂逅というよりは啓蒙に、知り合うというよりは思い出すという行為に近かった。
ハントの世界は一瞬にして完全な輪となってつながった。
―――ああ、ここにいたのか―――。
ハントは動揺を悟られぬように抑えつつ、何とも言いようの無い高揚と歓喜と共に、その浮かぶはずの無い言葉を胸の内にしまいこんだ。

ハントにとっては長い一瞬から気がつくと、彼は二人に椅子を勧めた。
「今回はテューリアンの文化的研究にお出でですか?」
「ええ、うちはヴィザーに接続できますが、やはり美術品や遺跡は実物を見ないことには始まりませんからね。地球にもっとカプラーがあればいいのですが、科学者であるあなたの前では申し上げにくいことですが、実用的な他の分野に比べて文化というのは後回しにされがちでしてね。
今回ようやく実地調査の機会を得られて非常に嬉しい限りです。局の活動もようやく軌道に乗りだしたというところですかな。
異星文化局は、いずれはテューリアンやジェヴレンに関しての博物館を建設したいと考えているのですよ。今回の旅行から戻り次第、その起草委員会と基金が設置されることになっております。
これからはうちも忙しくなります。近々ASDにもお邪魔してこれからお世話になるでしょうな」
合理主義、現実主義のテューリアンといえども、だからと言って、地球人とは大きく異なるものではあったが、美意識や非生産的な趣味嗜好と言うものが全く欠落しているわけでは無かった。
さらに、人間の何千倍もの長い歴史を持つ種族であってみれば、その文化芸術の豊かさは想像に余りある。その研究自体が長い歴史を有するものになるであろう。
それらはすでにテューリアンたちによって研究されているものではあるが、地球人は地球人なりに研究してみれば、また面白い視点での発見があるだろうことは疑いない、とクレメンティ教授は述べた。
教授はボローニャ大学のラヴェンナ・キャンパスで文化財の保存を学び、イタリア各州の文化財保護官として務めた後、イタリア国立メルトリア近代美術館の館長に任命された経歴を持つ文化財の修復・分析などの権威であった。
いくつかの絵画に用いられている見る角度によって色を変える不思議な顔料や古い陶器らしきものを構成する土に似た物質など、テューリアンの世界には未知の物質が数多くあり、テューリアンから提供されるそれらの資料の科学的な理解の助力や分析検査・管理保存などの方法や装置などについて、ASDとの協力は欠かせないものになるだろう。
つまり、この先、クレメンティ教授と、そしてシニョリーナ・ヒロミ・オルフィーノと長い時間を共にするということであった。

二人と別れ、カフェテリアを離れて自分の船室へ戻ると、ハントは先程自分の身に起こったことは何であったのかを考えた。
ハントの持つボキャブラリーは膨大なものではあったが、科学論文を記す語彙の中には適当なものなど見つかるはずも無く、文系の方面においてもハントの素養は並ならぬものではあったが、持てる限りのボキャブラリーを検索してみても、相当する語彙は見出すことができなかった。
たとえ朋友の言語学者のマドスンであったとしても、自分を襲った奇妙な感覚を表現することは不可能なのではあるまいか、とハントは思った。
ハントは考え抜いた末に、その現象を強いて表すとすれば、何とか一番近い言葉は「一目惚れ」ということになるのではないかと思った。
ハントは科学者であったから一目惚れなどというものは信じない。というよりも、一目惚れなどというものはプリンのような甘ったるい脳みそに起こるニューロンの誤作動でありシナプスの暴走であって、「面接のように女を選ぶ」とコールドウェルが苦笑交じりに言うところの自分の恋愛スタイルとはもっともかけ離れたものであると信じていたのである。
それにしても、もしこれが一目惚れというものだとしたら、それはハントが想像していたものとはかなり異なるものだった。
一般に言われるようなロマンチックなものというよりは、ハントにとってはほとんど超常現象に近いものであると思えた。
もし自分がダンチェッカー教授であったなら、自分で自分の脳を解剖したくなるかもしれない。もっとも、こんなことがバレたら大笑いに笑い飛ばされるのがオチであろうが…。

旅行の行き先は違ったが、帰りの船中では、期待を込めつつうろうろしていた成果が上がって、ロミが一人でいるところを見つけることが出来た。
今度はハントの方から声をかけて近づいた。
「やあ、ロミ。どうだったかな、初めての宇宙旅行は?」
「ハント先生」
「ヴィックでいいよ。私も君をロミと呼んでいるのだし」
「分かりました…ヴィック」
その言い方がハントには可笑しかった。半分日本人であるせいか、ロミは敬語を使わない話し方というのが苦手であるようだった。
「テューリアンの世界は本当に興味深いことばかりで…一体どこから調べたらいいのか目移りしてしまいます」
「そうだろうね。よく分かるよ」
「私は主に絵画の方が専門なのですけれど、テューリアンの絵画には幾つか面白い特徴が見られますね」
「ほう、どんなことかな?」
「そうですね、例えば…」
ロミはハントに話しながら自分の考えを頭の中でまとめているようだった。
「地球ではたまに、写真があれば写実画は要らない、と考える人達がいますよね。
テューリアンもそれに近い考え方をする訳なんですが、彼らの場合は少し違って…写真のような絵はいらない、というか…要するに、写真に出来ないからこそ、それを絵にする意味があると考えるんですね」
「なるほど」
「もちろん、全ての絵画がそうである訳ではありません。テューリアンの世界にも写実派の絵画というのは存在します。
でも、他の画風のものと比べると数の割合はごく僅かです。
だから…テューリアンの絵画というのは、地球の絵画以上に、夢を表現するための手段であり、合理主義の彼らのイメージに反して、とても幻想に満ちているものなんです…」
ロミは陶酔した眼差しで虚空を見つめた。ハントの方はそんな彼女をうっとりと眺めていた。
ふと気がついてロミは内心大いに照れた。
「先…ヴィックの方はいかがでしたか?と言っても、お伺いしてもおそらく私にはちんぷんかんぷんですわね。理科は苦手だったんです」
とロミは笑った。
「私も学生時代の美術の成績はひどいものだったよ。私の絵画の腕前は何を描いてもピカソ顔負けだった」
ロミは小鳥のような笑い声を立て、それを収めると思いついたような口調で言った。
「トライマグニ・スコープ…あれも、先生の一種の芸術作品なのかもしれませんね」

クレメンティ教授の言ったとおり、視察旅行から帰って二週間が過ぎた頃、ASDはユネスコの要請を受けて共同研究プロジェクトチームを立ち上げることとなり、ハントはロミと教授に再会した。
ASDの長官グレッグ・コールドウェルは、プロジェクトの人選を行ったとき、はじめ、ハントはこのプロジェクトに乗らないのではないかと思った。
ハントは芸術方面に興味があるようには見えなかったし、実用を目的としない研究に高いプライオリティを置くタイプであるようにも見えなかったからである。
しかし意外にも、ハントは何も言わず諾々とプロジェクトの名簿にその名を連ねた。
要するに物理化学に関することなら分野は問わないということなのだろうか、と納得しかけたコールドウェルだったが、ハントに再会の挨拶を述べるロミの姿を見たとき、彼は即座に全てを悟った。
後に二人きりになるとコールドウェルは呆れ笑いでハントに言った。
「仕事場に雑音を持ち込むのは懲りたのではなかったのかね?」
ハントは苦い顔をした。
「雑音を鳴らすためにストラディバリウスをいたずらに弾けるものかね」

ヒロミ・オルフィーノは日系イタリア人だった。イタリア人の父と日本人の母を持ち、イタリアで生まれ、五歳から十四歳までは日本の祖父母のもとで過ごした。
クレメンティ教授と同じボローニャ大学で学位を取得し、ユネスコに就職した後は彼に師事している。
これまで結婚暦は無く、今年三十の大台に乗ったが、アジア人の血が混ざっているせいか、年齢よりもとても若い見た目をしている。二十ハタチそこそこと言っても疑う者はまずいまい。
ロミという呼称はパリのユネスコ本部のフランス人の友人がHIROMIという発音を上手く言えずに「頭にHアッシュのつく名前は呼びにくい」と頭の音を省略してしまったのがそもそものきっかけだった。(*フランス語では日本語のハ行は発音しにくく「ヒロミ」の場合「イロミ」になりがちである)
他の国の友人たちもその方が呼びやすかったらしく、彼女の周辺ではそれが彼女の呼び名となった。
彼女自身もその音が気に入ったので、その後もずっと通称として用いている次第であった。
ラテン系のあでやかな色っぽさと日本人の繊細なしとやかさを兼ね備えた不思議な魅力をたたえた女性で、とても聡明で博識だったが、それを鼻にかける風でもなく、謙虚で真面目だった。
どちらかと言えば内気だったが、黙っていても存在感があった。
どれだけでも華やかに振舞うことができる一方で、必要とあれば空気のように場に溶け込むこともできた。
お姫様のように品が良く、メイドのように気が利いた。
慎ましく控えめな情熱家で、行動力に溢れ意欲に満ちた淑女であった。
これまでのハントが知っているキャリアのある女性というのは、必要と必然からであろうが、大抵が、気が強く、我が強く、押しが強いものだった。だが一方でロミは、芯が強く、意志が強く、粘りが強い。
判で捺したように無個性で薄っぺらではない人間を見つけることの方が難しい世の中で、矛盾と神秘に満ちたロミのような女性は、ハントにとってその存在は珠玉であった。

「全ての恋は幸福な勘違いから始まる」と言ったのは誰であったか。
一目惚れはその勘違いの最たるものであると思っているハントは、何より自分の心を一番信用していなかったので、他人事ひとごとに対するような興味で、もし共に長い時間を過ごして彼女をよく知るようになれば自分のひどい思い込みと幻想が失望と幻滅に変換される可能性を考えた。
それならそれでもよかったのだが、実際の成り行きはと言えば、ハントは幻滅どころかかえって自分の一目惚れの勘の正しさの不思議を再認識するはめになった。
時間が経つにつれて、ロミという触媒によって惹起される蠱惑的な感情はますます強化されてゆき―――ハントは彼女にぞっこんだった。

ハントの一目惚れほど極端なものではなかったが、ロミもまた急速にハントに惹きつけられてゆき、気がつけばすっかり夢中になっていた。
もっとも、ハントと知り合って心惹かれぬ女性の方が比率としては少なかったのではあるが。
ロミがはじめてハントを知ったのはルナリアンが発見されたときの雑誌の記事でのことである。
トライマグニ・スコープとその発明者についての記事を読んだとき、ロミはその装置を美術品の分析に活かせたらどんなに素晴しい成果がもたらされるだろうと考えて軽い興奮を覚えた。
記事と一緒に、添えられていたえらくハンサムな発明者の写真の顔も、それ以来記憶の隅に残っていた。
実際に出会ってみると、ハントは写真の何十倍も魅力的な男性だった。
成功して一角ひとかどの地位を築き、仕事ができる男性というのは、威厳と個性を持ち合わせた魅力的な人物が多い。
ロミはそういう人々を目にする機会も多かったが、ハントほどに惹きつけられた男性は初めてだった。
その頭の良さと有能さといったら、精力的に仕事に取り組む時のプロフェッショナル・オーラは輝かんばかりだった。
生き生きとした生命力は爽やかな色気を醸し出し、自信家ゆえにやや尊大気味ではあったが、陽気で愛嬌があり、紳士的で優しく、いちいち絵になる立ち居振る舞いは洗練されていた。
美化しすぎていると自分で分かってはいるものの、ハントはなかなかそれを否定する材料を与えてくれはしなかった。
才能に満ち溢れたセクシーな男に対して、晩生おくてなロミは手も足も出すすべが無い。
男性に使用するにはおかしな言い方ではあるが、全くハントは高嶺の花にも程があるというものだった。その山の高さときたらチョモランマ並である。
耳に入るところによればやはりモテるひとであるらしく、同性ながら関わりたくない女の競争も激しいものに違いない。
いや、彼が四十歳まで独身であるところをみると、手を出せる勇者はいないということだろう。
命がけの登山に挑むようなものである。考えるだにとんでもない、とロミは頭を振った。
それにどう見ても彼は女性より仕事の方が好きだった。
ロミにできることはと言えば、全力で仕事に打ち込んで、少しでもハントの役に立つ、ということくらいのものだった。
もしハントに、出来の悪い女だ、などと思われでもしたら首を吊りたくなるだろう。
だいたい、仕事相手に恋情を抱くなど不謹慎なことではないか、と真面目なロミは溜め息をつく毎日だった。

一方でまた、ハントもロミに対しては、常の積極性を発揮できずにいた。
女性に対する柄にも無い初めての弱気な態度に、ハント自身が戸惑っていた。
つまるところ、ハントは彼女に本気になり過ぎたのだった。
もちろん今まで交際した女性たちに対しても、真摯でなかったつもりはなかった。
だがやはりハントにとって何かが彼女は特別だった。

生来の勝気とポジティヴ思考の持ち主であるハントは、あまり恵まれているとは言いがたい幼少期を送っていたが、いつかはその分までも幸せになってやろうと決めていた。
自分が幸せになるためにはまず人を幸せにしなければいけない。
それについて、彼は社会の役に立つ人間となり世に認められ、公的には大のつく成功を収めていると言えただろう。
だが一方で私的には未だに満たされているとは言えない思いがどこかにあった。
明るく人好きのする男である一方で、根無し草に育ったおかげか本質的には孤独を好む性質たちであったし、感情表現が苦手で、心の奥底の激しい情熱を、仕事に向ける程には人に向けることができなかった。
ハントが幸福にした人間は、社会的には何百万、何千万といるであろうが、それに反して、個人的には長期的に成功した例は一人もいなかった。
恋人や家庭人として適格ではないと自覚しながらも、悪しき完璧主義者ではなかったハントは、これまでは、誰しも弱点はあるものだ、とめげずくじけず女性との幸福を追求できた。
だが、ロミに対しては持ち前の強気も自信も、全て無力な強がりと虚勢にしかならない気がした。
否定され傷つくことが怖いとか、失いたくないものができてしまうことに対する恐れとか、そういった子供じみた感傷はもはやワイヤー並になってしまった神経を傷つけはしなかったが、ハントが何よりも恐れたのは、自分が傷つくことでも辛い思いをすることでもなく、自分によってロミが幸せではなくなってしまうことだった。
それを想像することさえも、ハントにとっては耐え難かった。
もしロミと上手くいかなければ、ハント自身が自分を否定してしまいそうだった。
いつもの建設的な努力や前向きな意欲も抱けぬほどに―――ハントは彼女に本気であった。

らしくもない自分の消極性に対する苛立ちと同時に、ハントは焦りを感じてもいた。
自分が躊躇している間に他の男に彼女を奪われるのではないかという恐れがハントをさいなんだ。
そもそもあれほど魅力的な女性がこれまでフリーでいたことが不思議なのだ。
現に、ハントの助手のダンカン・ワットなども彼女に好意を抱いたらしく、明らかに彼女と「お近づき」になろうとする様子を見せたので、そんなある時、ハントは思い切り凄みを込めた眼つきでワットを睨み付けてやった。
ハントの対抗馬となる自信を持てる男はまずいない。
それ以来、チーム内の男性陣の暗黙の了解で、「ハント副長官の女に内定している女性」に色目を使う者はいなくなった。
我ながら横暴だ、とハントは思う。
今までハントと交際した女性たちは、ほぼ例外なくハントを束縛したがった。ハントが結婚を厭い独身貴族を気取っているのも、それが大きな原因の一つでもあった。
だが今、ハント自身が彼女たちを咎められないようなことをしてしまっているのだから、まったく勝手なものである。
自他共に認める天才であるハントは今、百のノーベル賞よりも唯一人の女性を欲する凡俗な恋する一人の男であった。

こうして、進展と言えるものがほとんど無いまま―――あるとすればロミの敬語を止めさせるのに成功したことくらいであった―――二人は数ヶ月の月日を過ごした。

後編へ続く


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